東京証券取引所による市場改革と低PBR(株価純資産倍率)企業に対する是正要請、さらには新NISA(少額投資非課税制度)始動もあって、上場企業の間で株主還元強化の動きが相次いでいる。従来掲げてきた配当性向を引き上げ、増配に踏み切る企業が多い。
また、株主への公約として、業績悪化時にも減配しない「累進配当」方針を掲げたり、新たな還元指標にDOE(株主資本配当率)を採用したりする動きも盛んだ。株主還元の強化は今や上場会社の常識で、今期業績が減益見通しなのに増配を予定する企業も珍しくない。
株式投資の一番の醍醐味は業績が拡大しそうな銘柄を探し出して値上がり益を得ることだが、特に個人投資家は配当に対する関心も高い。配当利回りが高い銘柄は、比較的に値下がりリスクが限られるという側面もある。
過去10期「減配なし」、増配5回以上を対象
そこで今回は9月13日(金)に発売した『会社四季報』2024年4集(秋号)の巻頭特集でも取り上げた高利回り銘柄のランキングを、条件を一部変更して掲載する。
対象企業の条件は、今期・来期とも増益予想で過去10期の間に「減配なし」、増配が5回以上あった企業のみに限定。今回はさらに業績でも「今期の純利益予想が30億円以上」の条件をつけて対象企業を絞り込み、今期予想配当利回りの高い順にランキングした。
ランキング結果を見ると、上位20社は配当利回りが4%以上となっている。上位の顔ぶれを順に紹介していこう。
配当利回りが5%を超えて1位となったのは安藤ハザマ(1719)。ダムやトンネルなど大型土木に強い準大手ゼネコンだ。
昨年5月に発表した中期経営計画の中で株主還元の強化を掲げ、自己株取得も含めた総還元性向で70%以上を目指す方針を表明。前期は40円から60円へと大幅増配を実施し、配当性向は6割を超えた。今期も60円配を維持する方針で、依然として高い配当利回り水準が続いている。
2位はミニショベル主体の建機メーカー、竹内製作所(6432)。こちらも大幅増配を続け、利回りが高まったケース。業績自体も非常に好調で、今期は前期に続き最高益を更新する見込み。配当は前期の年間158円(記念配含む)から200円に増やす計画だ。
3位以下も多様な業種がランクイン
3位は、このランキングの常連となった橋梁・建築の宮地エンジニアリンググループ(3431)。第二京阪道路や阪神高速の工事など豊富な受注残を抱え、今期は前期の最高益をさらに更新する見通し。前期に記念配を含む大幅増配を実施したが、今期も株式分割を考慮すると増配を計画している。
4位のイーグル工業(6486)は、NOK
(
7240)系列で自動車用を中心とするメカニカルシール、特殊バルブの大手。今期は前期の80円から90円に増配する予定で、配当性向は約5割だ。
5位の総合化学メーカー、東ソー(4042)は好財務を強みに減益時にも減配を避けてきた。今期は生産正常化や値上げ浸透で石化の収益が上向くほか、苛性ソーダや塩ビも設備定期修繕の一服で操業度が上がる。増益見込みで、配当は年85円(配当性向46%)を維持する方針だ。
6位のSBIホールディングス(8473)は会社公表の業績、配当予想ともなし。四季報では増配含みのレンジ予想で連続増配の期待がかかる。8位の大林組は最近になって還元姿勢を非常に強めている。
(東洋経済 記者)
減配知らずの高配当利回り銘柄ランキング
(注)四季報秋号の今期予想ROE5%以上、今期予想純益30億円以上が対象。過去10期中に増配回数が5回以上に限定し、無配、減配があるもの、また、今期、来期とも最終減益、減配予想は除く。今期配当利回りの高い順にランキング。レンジ予想の場合は下限を使用。7、8月期決算会社、決算期変更の会社、前期と会計基準が異なる会社は除く。利回り、PERは8月26日終値で算出。連は連結決算、♢は国際会計基準。
(出所)東洋経済作成