「NYCBショック」で投資家はニュージャージー州の地銀を警戒

商業用不動産の影響度がネック

ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)発の衝撃に不安を募らせた投資家は、同じく商業用不動産ローンに対するエクスポージャーが大きい他の米地銀も敬遠している。その中でも大きく売り込まれたのが、隣のニュージャージー州を本拠とするバレー・ナショナル・バンクコープだ。

バレー・ナショナルの株価は、NYCBが予想外の損失や減配を発表してからの2日間で約14%下落した。

バレー・ナショナルは同業他社に比べて商業用不動産ローンへのエクスポージャー比率が高い。2023年12月31日時点では、計502億ドル(約7兆4500億円)の貸出債権のほぼ半分を商業用不動産が占め、ニューヨーク、フロリダ、ニュージャージー各州へのエクスポージャーが大きい。10-12月(第4四半期)決算発表資料によると、商業用不動産ローンの内訳はオフィスビルが約10%、アパートと住宅が24%、小売りが17%を占めている。

シリコンバレー銀行(SVB)やファースト・リパブリック銀行など、複数の地域金融機関が破綻してからはまだ1年足らず。投資家は商業用不動産へのエクスポージャーがこのセクターに新たな混乱を引き起こすのではないかと懸念している。商業用不動産市場は高金利と在宅勤務の普及によってオフィスの空室が増え、リモートで働く多くの従業員が賃料の安い都市に移るようになったことで打撃を受けている。

バレー・ナショナルのアイラ・ロビンス最高経営責任者(CEO)は2日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、商業用不動産へのエクスポージャーが大きいとはいえ、同行は融資の引き受けに慎重を期しており、多額のローンが不良債権化する心配はないと語った。

同行のような地域密着型の金融機関は、ウォール街の大手金融機関よりも商業用不動産へのエクスポージャーが高くなる傾向にある。またバンク・オブ・アメリカ(BofA)やJPモルガン・チェースといった大手ほど事業の多角化が進んでおらず、商業用不動産で受ける痛みが増幅しやすい。

バレー・ナショナルの商業用不動産へのエクスポージャーは、規制当局が特別な監視の目を向けるのに十分なほど高いとみられる。

ただロビンスCEOは、同行が置かれている環境はNYCBとは異なると説明。NYCBの10-12月業績が悪化した一因は、シグネチャー・バンクの預金を買い取ったことで、追加資本を必要とする規制カテゴリーに入ったことだ。ロビンス氏によれば、バレー・ナショナルの資産規模は609億ドルで、規制がより厳しくなる基準1000億ドルを大幅に下回る。

アメリカン・キャピタル・パートナーズのリサーチディレクター、アンソニー・ポリーニ氏は「NYCBが抱えている信用の質を巡る懸念は隔絶されたものであり、パンデミックになるような類いではない」と指摘。バレー・ナショナル株の投資判断を「ストロングバイ」、NYCB株を「バイ」とする同氏は、両行とも商業用不動産ローンについては引き受け基準が強固だとし、「現在の最大の問題は商業用不動産の環境ではなく、商業用不動産へのエクスポージャーに対して規制当局がどう反応しているかだ」と述べた。

2日の米株式市場では地銀株は反発し、NYCB株が一時8.5%高、バレー・ナショナルが一時4.5%。

著者:Diana Li、Lyla Du

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