株式投資で1億円以上を稼ぎ出し、個人投資家から目標とされる存在の「億り人」。では、億り人はどのように資産形成を行ってきたのか。その投資の極意をひもとく連載企画が「億り人の『極秘投資術』」です。
第5回となる今回は、DUKE。さん。新高値をつけた銘柄へ投資する手法で2014年に累計利益1億円を突破。現在は「新高値ブレイク投資塾」という投資塾も主宰。4年で5人もの億り人を誕生させました。
今回はそんな「新高値ブレイク」の投資手法についてお話しいただきました。
「楽しい投資」を探すことが勝つ秘訣
私が株式投資を始めたのは、2003年のことです。当初は相場環境がよかったこともあり、約2年半ほどで2000万円以上儲けることができました。「自分は天才かもしれない」と勘違いしてしまいましたね。
鼻をへし折られたのは「ライブドアショック」以降です。新興市場が大崩れしたことで、2006年からの3年間で儲けた2000万円の大半を失ってしまいました。そこからが本当の意味で、私にとっての株式投資のスタートとなりました。
一から株式投資を勉強しなおそうと、さまざまな本やセミナーなどに参加しました。株式投資には、バリュー株投資やデイトレード、スイングトレード、株主優待などさまざまな投資手法がありますが、それらのほとんどにチャレンジしました。
そうした中で感じたことは、投資手法は「自分に合ったものがいい」という当たり前のことです。投資を始める前に、どの手法で投資しようか、と悩む人も多いと思います。ただ、まずはやってみなければ分かりません。就活をする際にさまざまな会社の話を聞いてみなければ、どの会社に就職したいか、ということは決められないと思います。
株式投資でも同じことです。実際にその手法を試してみて、自分の性格やライフスタイルと合致するのか、といったことを試してみるべきなのです。その中で自分にとって「楽しい投資」を選ぶことが成功の秘訣ではないでしょうか。
過去の高値を更新した「新高値」に注目
私の場合は、アメリカの著名投資家であるウィリアム・J・オニールの投資手法が、自分にピッタリ合いました。新高値をつけた銘柄に投資するスタイルです。
新高値とは、株価が過去の高値を更新したということです。「上場来高値」や「年初来高値」という言葉を聞いたことがあるかと思います。簡単にいえば、そのような株価が上がっている銘柄に注目して、さらに高い価格で売る、というものが高値ブレイクの手法です。
では、ここからは私が実践している「新高値ブレイク」の手法をお話ししていきたいと思います。特徴は株価チャートをもとに判断する「テクニカル分析」と企業業績などをもとに判断する「ファンダメンタルズ分析」の両方を組み合わせることです。
STEP.1 新高値の銘柄を選別する
STEP.2 高値銘柄から業績をチェック
STEP.3 収益が今後も伸びると判断した銘柄を購入
まずは投資サイトなどで新高値の銘柄を絞り込んでいきます。例えば「会社四季報オンライン」では、年初来(昨年来)高値と10年来高値の2つをみることができます。
このときに注意したいのが、高値銘柄であれば、何でもいいというわけではないことです。あくまで高値銘柄はチャート上の話で、必ずしも今後も右肩上がりに上がっていく銘柄というわけではありません。
そのため、こうした高値銘柄の中から、決算説明資料などを確認して地道に業績分析を行います。四半期決算や競合他社への優位性、今後の成長性などを自分なりに調べて、今後も収益が伸びそうだと判断すればその銘柄を購入するという流れです。
「新高値ブレイク」という名前で誤解されてしまうかもしれませんが、あくまでテクニカルはきっかけにすぎず、「テクニカル1:ファンダメンタルズ5」の比重で重きを置いています。
資金を5分割し5銘柄へ集中投資
ファンダメンタルズをみるうえで、私が特に注視しているのは「売上高」「営業利益」「営業利益率」の3つです。売上が10%以上、営業利益は30%以上、営業利益率も改善・向上しているという銘柄が理想的なものです。企業のステージによって異なりますが、増益率などが高ければ高いほど魅力的だといえるでしょう。
もちろん、業績分析をいくらしっかり行ったからといって、百発百中で当たるわけではありません。そのためリスクヘッジを行うため、資金を5分割して5銘柄に投資することを推奨しています。例えば、500万円を株式投資に使えたとすると、1銘柄100万円を5銘柄に投資するのです。
ただ、100万円投資するといってもいきなり全額投入するわけではありません。その100万円をさらに5分の1に分けて、20万円ずつ投資するのです。もし、投資した銘柄が上がっていけば、その株価の上昇にともなって20万円ずつ投資していきます。同じ金額で投資していくことで、株価が上がっていき過熱感が出てきても、購入できる株数は減るため下落しても大きな損を被りにくくなります。
右肩上がりで上がっていった銘柄も、あくまで含み益で売却しなければ確定利益にはなりません。銘柄選びはファンダメンタル優先と話しましたが、利益確定に関しては反対にテクニカルを優先して売却を決めます。
いくつか手法がありますが、大きなものとしては、株価が上のボックスから下抜けの動きを見せた場合は売却するというものです。株価が数十パーセント上がると我慢しきれずに売却してしまう方もいらっしゃるかと思います。ただ、このように機械的にルールを決めることで、テンバガーのように右肩上がりで上がっていく株をしっかりホールドすることができます。
「-10%」での損切りは鉄則だ
また「失敗」の定義もしっかり決めています。それは-10%になったら必ず損切りするというものです。資金量が少ないときは逆指値で購入した金額から、-10%になると自動で売却するということでもいいでしょう。
損切りラインに達したときは、自分のファンダメンタルズ分析が間違っていた、ということを市場が教えてくれたのです。この損切りルールを守ることは鉄則といっても過言ではありません。
この新高値ブレイクにはいくつかの利点が存在します。1つ目が時間が限られているサラリーマン投資家でも可能な手法だということです。中長期投資のため、日中は株式投資ができない人でも帰宅してからゆっくり分析をして投資することができます。そのため、デイトレードとは異なり、間口が広い投資といえます。
2つ目が成功と失敗の判断が早いことです。例えば、バリュー株投資は10年経っても、結果が分からないことがあります。しかし、高値ブレイクは短いと1週間から2週間で結果がすぐに分かります。そのため、自分の成功・失敗を振り返って次につなげることができます。
3つ目が資金効率がいいことです。業績が大きく変化する予兆を感じ取って新高値をつけている銘柄を見つけられれば、株価は右肩上がりにどんどん上がっていきます。そのため少額しか投資できない方でも、大きな利益をあげられる可能性があるのです。
後編では、実際に私が投資した成功例と失敗例を実例にして、より詳しく新高値ブレイクについてお話ししていきます。
(構成:井上昌也)