「27年ぶり高値」の好地合いで気をつけること

逆行安銘柄をつかまないために
2018/10/02 15:00

 「27年ぶり高値」は、あくまで日経平均株価ベースだが、10月1日の終値が1991年11月以来の高値を更新した。なんで上がっているかの分析はさておき、メディアもこの現象を取り上げている。

 「株価って、また上がってきてるんだ……」。日本全国津々浦々の、株に興味の無い人々にも、『愛は勝つ』が大ヒットした1991年以来となる日経平均の高値更新のニュースはじんわり届いているはずだ。

 ただ、そんな日にあって、私鉄株の富士急行

9010)が前日比5.6%安と大幅下落している。下落率では、東証1部で7位だった。前週末まで上場来高値を更新していたが、朝一番から売りが殺到したのは、前週末に発表した今中間期(4-9月期)業績予想の下方修正が理由だ。

 富士急行は前週末28日引け後、4-9月期の純利益を従来予想の27億円から18.4億円へ下方修正した。この期間において、投資有価証券評価損を計上したためである。その投資有価証券とは、スルガ銀行

8358)株だ。スルガ銀行株の減損処理を行い、約14億円の評価損を特別損失に計上した。

 不適切融資の横行が明らかになったスルガ銀行の株価は、今年1月に付けた年初来高値2569円なる姿を到底思い出せないほどの低株価となっている。先週末9月末時点で568円。前年度末(3月末時点)の株価1469円と比べても6割超値下がりした。

 形式的な書き方をするなら、「時価が著しく下落し、その回復があると認められないもの」である。こうした銘柄を保有していた企業は、当該株式について減損処理する(取得原価を今の時価568円で取得していたことに洗い替えする)。

 この上半期でいえば、日本株でダントツに下げたのがスルガ銀行ということで、同様の事例が相次ぐことは想像に容易い。大きな地銀で起きた不祥事だったため、「持ち合い」関係にある上場企業が山ほどあるからだ。減損処理による下方修正の発表で富士急行は大幅安したが、次に備える価値はある。

 では、富士急行以外で、どの企業に減損処理の発表リスクがあるのだろうか?

 持ち合い関係とは、スルガ銀行株を保有している一方で、相手側のスルガ銀行も当該企業の株を保有しているということである。その関係は、スルガ銀行の有価証券報告書(18年3月末)を見れば察することができる。

 簿価ベースの保有額が資本金の100分の1を超える銘柄については開示が必要で、そうした銘柄だけでも合計33銘柄が開示されている。前期末時点でスルガ銀行による保有額(貸借対照表計上額)が多いのは、アサヒグループHD株58.19億円、住友不動産株36.35億円、京急株39.50億円、相鉄HD株36.36億円、日清製粉G株の31.50億円など。富士急行株についても36.36億円(127万7500株)保有していると記載されている。

 この後は、記載されている33銘柄それぞれの有価証券報告書を見ていく作業になる。予想通り数銘柄を除いて、持ち合い関係でガッツリとスルガ銀行株を保有していた。

 貸借対照表計上額で10億円以上の銘柄だけピックアップしても16銘柄ある。いち早く減損処理した富士急行は、この中で11番目。最大はクミアイ化学工業

4996)の88.5億円で、京浜急行電鉄
9006)やコクヨ
7984)、東京ドーム(9681)などが多いことがわかる。

 この中には入らなかったが、ジャスダック上場のマキヤ

9890)が34.6万株(5.09億円)保有している。時価総額82億円の小型株で、今期の最終利益予想は3.5億円。減損処理した場合の利益押し下げ影響は大きくなってしまう。

 日経平均が27年ぶり高値となり、気分が高揚している市場関係者は「今後は日本企業の上方修正に期待」と喧伝する。たしかにそうした企業も多くあるだろうが、逆だってある。逆側に関しては、「●●の株価が急落した」といった事実に基づいて同様の事例に身構えることは可能だ。

 「不適切融資は本当にスルガ銀行だけで行われていたのか?」という疑問も燻る。もし、第2のスルガ銀行が出てきたときは、少し面倒な作業だが、持ち合い関係にある企業を調べる一手間をかけてみて欲しい。

※株式コメンテーター・岡村友哉 株式市場の日々の動向を経済番組で解説。大手証券会社を経て、投資情報会社フィスコへ。その後独立し、現在に至る。フィスコではIPO・新興株市場担当として、IPO企業約400社のレポートを作成し、「初値予想」を投資家向けに提供していた。

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